恋愛心理テクニック講座、今回はイエスセット(イエスセット話法)という心理テクニックについて紹介します。
イエスセットはNLPというなんか名前だけ聞くとバスケットボールのリーグ名かなと思ってしまう、心理学の中の1カテゴリ?のテクニックです。そのへんもかいつまんで紹介するので安心して読んでみてください。
使用タイミング
- デートの約束を取り付ける
イエスセットはデートなどの頼み事を相手に承諾してもらう時に使う恋愛心理テクニック。
- サクッと整理!
-
イエスセットとは
「えー、ホントに?」と思ってしまいがちなんですが、人間ってテンポよく「はい」とか「うん」とか、イエスの返事をし続けていると、それに続く、本当はイエスって言うつもりのない質問に対してもよく考えずにそのままのテンポで「はい」って言ってしまう、というのがイエスセットです。
不思議に思うかもですし、人間がそんな単純なわけないじゃん、と思ってしまうんですが、これはもう、そういう風に人間の脳はできてる、という説明になってしまいます。
人間の脳はできるだけ楽したい、だからさっきからずーっと「はい」って言ってるなら次も「はい」っていうのが楽、って無意識に考えちゃう、という事なんです。
恋愛だとデートや食事に誘う際に、
- あなた:今日はいい天気だね
- 相手:そうだね
- あなた:暖かくていい気持ちだね
- 相手:そうだね
- あなた:風も気持ちいいね
- 相手:そうだね
- あなた:夜、屋外レストランいこうか
- 相手:そうだね
というのがよく例文として紹介されてるイエスセットの会話。
…なんですが「えー、ホントに?」ってこの例文を見るとまたまた半信半疑度合いが上がりましたよね。そんなロボットみたいな、オウムみたいな事人間がするとは思えないですよね。
そしてたぶんその感覚はあっています。あまりにも不自然な会話ですもんね、この例文。ここからイエスセットの具体例を見つつ、使いどころを見ていきましょう。
恋愛心理テクニック「イエスセット」の具体例
例:「デートの約束」のシチュエーション
- あなた:今日は特に寒いね…!
- 相手:確かに寒いよね
- あなた:だよねー。あれ、その服暖かそうでいいね
- 相手:あ、これ?うん、結構あったかい。最近買ったんだよね
- あなた:へー、そうなんだ。いいね。最近買ったんだ
- 相手:うん、前から気になってたんだけど思いきって買っちゃった
- あなた:いい買い物したね。前言ってたブランドの?
- 相手:そうそう!
- あなた:男物も置いてあるのかな
- 相手:うん、結構あったよ
- あなた:へー、オレも行ってみたいな、今度一緒に行こうよ
- 相手:うん、いいよ
イエスセットを用いた会話の具体例はこんな感じ。
イエスセットをがっつり使ってる感がさっき上で見た例文に比べるといくらか薄らいでるんじゃないかな、と思います。薄らいでなかったらゴメンナサイ、私の力不足デス…。
この具体例からさらに応用させたり、自分でオリジナルのイエスセット会話を作れるように、下記ではより詳細にイエスセットのキモの部分を書きますね。
まずイエスセットがなぜ効果があるのか
上の具体例を見てもらうとちょっとは「まあ確かにスムーズな会話ではあるわな」と感じるものの、まだイエスセットに対して半信半疑だと思います。そんな簡単にイエスを誘導できるもの?って。
イエスセットでイエスを誘導しやすくなる理由は、
- ラポール形成(ようはスムーズな会話で打ち解けられる)
- 一貫性の原理(上で書いた楽したい、あんまり考えたくないっていうやつです)
- 肯定されることでの返報性(相手が好意的な態度だからこっちも好意的な態度を取りたくなるやつ)
の3つ。
確かにイエスセットの結果からみれば「イエスって言い続けてたらイエスって言いやすいじゃん!」なんですが、やっぱりそんなに人間って単純なものじゃないんですね。イエスセットを構築する3つの効果をちょっと掘り下げてみます。
ラポール形成
ラポール形成というのはまた耳馴染みのない言葉だと思うんですが、NLPという心理学ではよく出てくる用語で、ラポール形成とはようは仲良しの状態を指します。
「相手の意見を否定しない」という会話テクはよく聞くと思いますが、やっぱりどんな軽い会話でも否定されるとちょっとイラっと来ますよね。「今日暑いですね」「いやー?そうでもないんじゃない」とか返されるとなんか冷たく感じるというか(たまになんでも否定してくる人とかいると会話するのがしんどいですよね)。
で、反対に何を言っても受け止めてくれる、肯定で返してくれるのってすごい話しやすいんですよね。
上で見たイエスセットの具体例なんですが、相手もイエスって言ってますが、あなたも相手の意見を100%受け止めているんですよね。こういうイエスの応酬というかラリーの会話ってとっても心地がいいもの。その結果「この人としゃべってると楽かも!」「気が合うかも!」と仲良し状態(ラポール形成)になれるんです。
仲良し状態になっているとあまり頭を使わずに会話…、というか警戒心などがない楽な状態で会話しているので、相手の提案もあまり考えこむことや警戒することなく「はい」と応じやすくなるんです。
一貫性の原理
一貫性の原理については別の恋愛心理テクニック講座でくわしく紹介していますが、ざっくり書くと、一貫性の原理は一度決めた態度や決断を変えたくない、という人間の無意識の心理。
逆に一度決めた決断には後乗せサクサクで別の理由も乗せてさらに自分の決断を肯定しがち。
- やっぱりこっちの服買お(決断)
- そうだよ、こっちの服の方があわせやすいはずだし(後乗せ)
- それに値段はちょっと高いけどそのぶんこっちの方が厚手でしっかりしてるし(後乗せ)
- 店員さんもあっちよりこっちの店の方が親切だったし(後乗せ)
これが一貫性の原理。
イエスセットで言うとさっきもイエスっていったんだから次もイエス。という事になります。…ちょっと強引ですが。でも仲良し状態(ラポール形成)になっていると警戒心が解かれているのでこんな風な思考回路になる、というのはある程度理解できるのではないでしょうか。あんまり深く考えないでオッケーしちゃって大丈夫でしょ、みたいな。
肯定されることでの返報性
返報性というのもちょっと難しい言葉、ですよね。わたしは最初難しく感じました。
返報性というのはいわゆる「他人は自分の写し鏡」の事。笑顔で接してくれる人にはこちらもついつい笑顔になりますし、反対に不愛想な人にはこちらも不愛想になってしまいがちですよね。
ラポール形成のトコロでも書いたんですが、具体例の会話ってお互いに相手を尊重…、というと大げさですが相手の考えを全肯定する方向に会話が進んでいますよね。
そうなると「この人とっても好意的だなー。私もできれば好意で応えたいなー」と思うんですね。これはたぶん皆さんそれなりに経験あるんじゃないでしょうか。
ここまでのまとめ
ここまでをまとめるとイエスセットがイエスを誘導しやすくなる理由は、ラポール形成、一貫性の原理、返報性の3つがあわさり、
- すごい話しやすい!会話が気持ちいい!警戒心といちゃお(無意識)
- イエスって言ってたしイエスでいいよね
- 好意を向けられてるから好意で応えたい
という段階を踏んでいるから、結果的にイエスセットを使うと結果的に相手のイエスを誘導しやすくなる、という寸法なんです。単純にイエスが続いてるからイエス、みたいなオウムやロボットみたいな感じじゃなく、けっこういろんな事が相手の脳内で起こってるんです。
イエスセット使用時の注意点3つ
イエスセットを構築する心理の裏付け3つは書きましたので、続いて実際にイエスセットを使う際の注意点を3つ紹介します。
これをきっちり守らないと、最初の例文の会話みたいになんか味気ない質問ばっかりしては相手がイエスと返すだけという、会話が盛り上がってない感がものすごく出てしまうので注意してください。
- 通話か実際会っての会話でのみ使用する事
- イエスを狙った質問ばかりになって不自然な会話にならないようにする事
- 予想に反し否定された時の対処
①通話か実際会っての会話でのみ使用する事
イエスセットはメールやLINEのメッセージなどには不向きな恋愛心理テクニック。
というのも相手がよく考えずに会話してくれる状況を目指したテクニックなので、ある程度会話にリアルタイム性が必要なんです。メールとかLINEとかって別にすぐ返さなくてもいいので、返信内容をじっくり考える時間がありますよね。
そうなるといくらそこまでのメッセージのやりとりがスムーズでもじっくり考えてみると「それでもやっぱりデートはなぁ…」となってしまいがち。
なので普段メッセでのやり取りだったとしても、イエスセットを使う際は通話で行う事を強くおすすめします。
②不自然な会話にならないようにする事
注意点2つ目に、相手のイエスを狙うあまり不自然な会話にならないように気を付けてください。
一番最初の例文みたいなのが悪い例。
会話がぜんぶ尻つぼみでまったく発展していってないですよね。ただ事務的なイエスが返ってきてるだけというか。どちらかというとイエスを引き出すというよりは相手の意見を全部受け入れる、という姿勢の方がイエスセットでは大事。
こういう時にNLPという心理学でよく用いられるのがバックトラッキングという会話のコツ。
ようはオウム返しのコトです。…なんかバックトラッキングとかいう難しい単語ですがやってることは相手の言ったことをそのままオウム返しで会話してる風に見せるだけ。
もう一度上記で見たデートに誘う会話の具体例を見てみると、
- あなた:今日は特に寒いね…!
- 相手:確かに寒いよね
- あなた:だよねー。あれ、その服暖かそうでいいね
- 相手:あ、これ?うん、結構あったかい。最近買ったんだよね
- あなた:へー、そうなんだ。いいね。最近買ったんだ
- 相手:うん、前から気になってたんだけど思いきって買っちゃった
- あなた:いい買い物したね。前言ってたブランドの?
- 相手:そうそう!
- あなた:男物も置いてあるのかな
- 相手:うん、結構あったよ
- あなた:へー、オレも行ってみたいな、今度一緒に行こうよ
- 相手:うん、いいよ
太字の「へー、そうなんだ。いいね。最近買ったんだ」の部分がこのバックトラッキング(オウム返し)を使ってる部分となります。
こんな風にオウム返しを会話にうまく取り入れることで、会話が勝手に広がっていくのでイエスセットの会話でも不自然さがなくなります。
慣れないうちはとりあえず「いいね」とか「なるほど」とか適当に相槌を打った後に、相手の言葉から数ワード抜きだしてただ繰り返すようにしてるだけで大丈夫です。
予想に反し否定された時の対処
イエスを期待したのに相手の反応が予想外だったときの対処方法。
これ、今まで説明してきませんでしたが、きっと読者の皆さんが一番気になってる所であり、たぶんイエスセットがそんなうまくいくわけない…、と思われている一番の部分だと思います。
そうですよね、上の具体例なんかも私が会話を作ってるわけですからイエスが返ってきてますが、リアルな会話では当然ノーが返ってくることもありますよね。
ただ立て直しはかなり簡単。というかシンプルで、イエスセット中にノーが返ってきたらさっきのバックトラッキング(オウム返し)を使うだけです。
ちょっとやってみますね。3度目の登場となる具体例を出して…、
- あなた:今日は特に寒いね…!
- 相手:確かに寒いよね
- あなた:だよねー。あれ、その服暖かそうでいいね
- 相手:…うーん、意外に寒いんだよね
- あなた:へー、寒いんだね、意外
- 相手:そう。生地がペラペラなのかも…
- あなた:デザイン性重視なのかもね
- 相手:うん、確かにかわいいのはかわいいよね
- あなた:うん、かわいい。いい買い物だと思うよ。前言ってたブランドの?
- 相手:そうそう
- あなた:男物も置いてあるのかな
- 相手:うん、結構あったよ
- あなた:へー、オレも行ってみたいな、今度一緒に行こうよ
- 相手:うん、いいよ
イエスを狙ったものの予想に反し服が暖かくなかったパターンの会話。リアルだと全然この流れもあり得ますよね。
で、さっき書いた対策のオウム返し。
上でも書きましたがイエスセットのコツはイエスを狙うというよりは相手の意見を全肯定するスタンスです。オウム返しをすることで、相手のノーの返答さえも「ああ、そうなんだね」と受け入れ態勢を取ることができ、相手もそこからまたスムーズな会話に戻るコトができるんです。
このデートに誘う具体例の中できっと一番ノーが返ってきそうな「前言ってたブランドの?」という部分。だいぶ賭けに出てますよね。この会話。リアルだと「ううん、また違うブランドなんだけど」って返ってくる可能性が高いと思います。
こんな時もオウム返しでオッケー。
「へー、違うブランドなんだ」⇒「うん、○○っていうブランドなんだけど」で続き、「へー、○○っていうんだ」でまたオウム返し。そのあと会話が進みいい塩梅のところで具体例の「男物も置いてあるのかな」に繋げれば会話の軌道修正完了です。
男物が置いていないブランドの場合「えー、そうなんだ男物ないんだ、残念」みたいな感じでここでもオウム返しをちょっとした感情を入れて返しておけば「あ、でも似たようなブランドがあって…」とか「確か大型店には…」みたいに別の会話を向こうが繋げてくれる可能性が高いのでそこに賭けましょう。
ここまでのまとめ
イエスセットの会話を自分で作るときのまとめは、
イエスを引き出すよりも相手の意見全肯定のスタンスを貫くのがキモ!予想してないノーが返ってきたら落ち着いてオウム返しで軌道修正
という感じ。頭で考えるとうまくできるか不安になるかもですが、とりあえず「困ったらオウム返し」というのを条件反射のようにやっておけば意外にうまくいくのでこれも覚えておいてくださいね。
講座:イエスセットについて
ここから下はイエスセットの実験や、イエスセット理論の大本であるNLP(Neuro Linguistic Programming)など、この心理テクニックの裏付け的な話になるので読みたい方だけ読んでみてくださいね。
イエスセットの実験
イエスセットの実験に関しては、ジョナサン・フリードマンさんとスコット・フレイザーさんという二人の社会心理学者の行った実験が有名です。こんな感じの実験でした。
- 「安全運転と書かれた看板を庭に立てさせて」といきなりお願いするケース
- 「安全運転と書かれたステッカーを車の窓ガラスに貼らせて」とお願いして、その2週間後に「庭に看板も立てさせて」とお願いするケース
- 「カリフォルニアの美観保全に関する嘆願書に署名して」とお願いして、その2週間後に「庭に看板を立てさせて」とお願いするケース
この3つのケースで、どれが一番庭に看板を立てさせてくれる率が高かったのかを調査した実験なんですが、①が17%、②が76%、③が46%という結果だったんです。
いくら町の事故防止のためとはいえ、自分の庭に「看板を立てさせて」と言われて17%の人がオッケーしたのがまずすごい話だと思うんですが、アメリカなので土地が広いんでしょうね。日本だときっと1%もオッケーしないと思います。
で、実験結果としては、結局人間は1回イエスっていうと次もイエスって言いやすい、というのがわかると思います。…ただ1回目のお願いにオッケーしてくれた人はそもそも心の優しい人だから2つ目の庭に看板立てさせても、オッケーしてくれたのかな、とも思います。
あとどちらかというとイエスセットの実験というよりは一貫性の原理やフットインザドアの実験になっていますね。スミマセン。またちょうどいいイエスセットの実験が見つかりましたら情報を更新させていただきますね。
NLPとは
NLP(Neuro Linguistic Programming)という心理学のカテゴリの一つがあります。ちょっと語弊があるかもしれませんがそういう認識で大丈夫です。
一時期NLP関連の書籍などもたくさん発売されていたので知っている方もいると思います。
NLPと心理学の違い
NLPがほかの心理学と違い特徴的なのは、NLPはより実践的だ、という点。心理学の中でも実際に私たちが日常生活で使ったり、自分の気持ちを整理したり、あがり症を改善したり、そういうために使う事を目的とされているのがNLPなんです。NLPは心理学と違い、人とのコミュニケーションにより特化していると言ってもいいかもしれません。
ただそうはいってもNLPも心理学の中の一つのカテゴリなので、明確にものすごい違う!とかそういうのはありません。上でも見ましたが心理学で言われてるこれをコミュニケーションや日常生活で応用するには…、みたいな感じです。