恋愛心理テクニック講座、今回はフットインザドアという心理テクニックについて紹介します。
フットインザドアはテレビや動画などでよく紹介されているのですでにご存じの方も多いかもですね。では、フットインザドアがビジネスではなく特に恋愛で効果的なのはご存じでしたか?ここではその理由も解説していますので読んでみてくださいね。
使用タイミング
- デートの約束を取り付ける
- マッチングアプリでの食いつきを上げる
- 恋愛対象として意識させる
フットインザドアはデートなどの頼み事、それから相手の好感度を上げる時に使う恋愛心理テクニックになります。つまり恋愛の初期段階に使う事が多いです。
- サクッと整理!
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フットインザドアとは
フットインザドアとは小さな頼み事から聞いてもらい、次第に大きな頼み事を頼んでいく、営業マンがよく使う心理テクニック。
「1週間無料なのでよければ一度お手に取ってみてください!」とか「5分間だけお話を聞いてくれませんか?」とか、相手が承諾しやすい頼み事をして、ちょっとずつ「今なら1か月これくらいの料金でお使いいただけますよ!」とか「もう少し具体的にお話ししたいので明日お宅に伺わせていただいてもよろしいでしょうか」に変えていき、結果的に契約ゲット!するんですね。
なぜフットインザドアが効果的なの?
なんで小さな頼み事から始めていった方が大きな頼みごとを聞いてもらいやすいか、なんですが、これは心理学的には「一貫性の原理」というものが土台になっています。
人間って変化を嫌うんですね。それを一貫性の原理というんです。
特に自分が決断した事はちょっとやそっとのことでは変えたがらなくて、皆さんも、
- なんかヒマだなー、そうだ、今年の夏は海に行くかなー。うん、そうだ、海最近行ってなかったし、海いいじゃん!海行こう!それに海行くとなると今からダイエットも頑張れそうだし!
- え、水着去年よりものすごい高くなってるじゃん…
- でも海行くって決めたし、ちょっと高くてもしょうがない、水着買う!
- え、今年はインバウンドの影響で宿が取りづらいの?でももう海行くって決めたし、水着も買っちゃったからちょっと高くてもいいから今のうちにホテル予約しておこう
という具合に、一度決めた事は自分の中でどんどん理由を後乗せサクサクして、その行動動機を強くして行っちゃったことないですか?
こういう自分の最初した決断を正当化したいというか「私が間違うわけないじゃん!」と思いたいのが一貫性の原理なんです。
一貫性の原理が働く際、最も大事なのが「自分で決めたという事実」。なので「お金あげるからさー」とか「宿題やったらご褒美にお菓子あげるよ」とかでは、自分で決めたわけじゃないので一貫性の原理は働かないんです。
恋愛心理テクニック「フットインザドア」の具体例
フットインザドアについてサクッと見たところで、さっそくフットインザドアの具体的な例を見てみましょう。
例:「マッチングアプリでの食いつきアップ」のシチュエーション
- あなた:【自己紹介欄に朝なかなか起きられない事を書いておく】ごめんなさい、ちょっといいですか?
- 相手:どうしたの?
- あなた:実は明日大事な会議がありまして、できれば朝一度だけでいいのでモーニングコールを鳴らしてほしいんです。目覚ましもセットしてるんだけど心許なくて…
- 相手:(そういえば朝が弱いって書いてたな)うん、いいよ。何時ごろ?
- あなた:ありがとうございます!助かります!
フットインザドアを用いてマッチングアプリでの食いつきを上げる具体例はこんな感じです。
でもまー、マッチングアプリだけでなく恋愛において、相手の好感度というか、相手にあなたのコトを恋愛相手として認識させるときにだいたい使えるのが上記の例文なので覚えておいて損はないと思います。
ただ、紹介してしまいましたが実はあまり悪用してほしくないです。誰かを洗脳するときにも入口は上記具体例と同じ手口が使われていますので、使うときは注意してください。
モーニングコールを鳴らす、でなくても「本を借りる」とか「ペンを借りる」とかなんでもいいんですが、モーニングコールは相手が遠距離であっても頼むことができ、また、理由付けも「朝起きるのが苦手」でかつ「大事な会議」という単純明快なものなので、たぶんほとんどの人が嫌な顔せずにオッケーしてくれると思います。
で、フットインザドアを使ったこの小さなモーニングコールという頼みごとをきっかけに、後日デートの約束などに繋げていく感じになります。
- 次の頼み事の候補
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モーニングコールの頼みごとの次におすすめの頼み事をいくつかリストアップしておきますね。
- 写真もっと見てみたい!
- お菓子食べてみたい!
- 弁当食べてみたい!
- お土産買ってきて!
マッチングアプリの時は「写真をもっと見てみたい!」などがいいです。「今何してる?」から入って今の写真を送ってもらうとか、相手の趣味がわかっていると思うので「○○してる所の写真送って!」と「ペットの写真送って!」と頼んでみましょう。
学校や職場など、実際に顔を会わす相手の場合だと、相手が料理好きの場合に限りますが「へー、○○さんお弁当なんだ、今度食べてみたい」や「え、それって○○さんの手作りスイーツなの?食べてみたい」など食べ物系に膨らますのがおすすめです。料理が得意ではないときは相手が出張などに行く際「お土産買ってきて!」と伝えておくのがおすすめ。
フットインザドアでは相手にかけさせる労力を少しずつ上げていくイメージが大事。
無報酬がキモ!
上でも書いたんですが、フットインザドアの土台は一貫性の原理、という事でした。
で、一貫性の原理が働くためには相手が「自分で決断した」と思う必要があるんでしたね。なので「お金あげるからモーニングコールを~」とか「今度ごはんおごるから~」とかではフットインザドアの効果が出ないんです。
フットインザドアを使う際は必ず無報酬!これ鉄則なので覚えておいてください。特に友達関係の相手に頼みごとをするときって、気軽に今度おごるからと言ってしまいがちなので注意してくださいね。
脳が恋愛感情と勘違いする
で、冒頭にフットインザドアは特に恋愛で効果絶大!と書きました。
その理由が、脳が勘違いする、からなんです。
これを「認知的不協和」といいます。ちょっと具体的に見てみましょう。下記はあなたにモーニングコールの頼み事された人の心の移り変わりです。
- 明日モーニングコールしなきゃなぁ…
- でもよく考えるとなんでオレ別に親しくもないあの子の頼みごと聞いちゃったんだろう。別にお金もらったわけでもないのに…
- うーん、なんか変だ、これ(頼みごとを聞いたという「事実」と「自分の気持ち」とが食い違っていて気持ち悪い「認知的不協和」状態)
- だってどうでもいい人に朝電話かける頼み事なんて普段受けないじゃん、オレ
- あれ、てことはもしかしてオレってちょっとあの子の事好きだったのかも…?
- あー、ならモーニングコールの頼み事受けたのも普通か、なんだ、そうだったのか、オレあの子の事ちょっと好きだったんだ
つまり自分の取った「行動」と「気持ち」とが全然違うため、どっちかをどっちかに合わせて不協和じゃない状態にしたくてたまらなくなっちゃうんです。
でも行動の方はもう変えられないですよね。だってすでに頼みごと聞いちゃった後だから。なので「気持ち」の方をモーニングコールの頼みごとを聞くくらいには相手の事を身近に感じている、気になっている、と思いこもうとするんです。
さすがに例文は大げさすぎで、頼みごとを1回聞いたからといっていきなり相手が「好き」まで思ってくれることは少ないとは思います。
でも有象無象の友達、知人、顔見知り、という恋愛感情の全くない関係性から、フットインザドアを1回使うだけで勝手に相手の中で「頼みごとを聞いてもいいくらいには身近な人」にランクアップできちゃう、と考えると効果がすさまじいですよね。
だからこそ恋愛ではフットインザドアが特に効果的なんです。
例:「デートに誘う」シチュエーション
- あなた:【通話や会いながらの会話で】今度1時間だけ時間もらえないかな?相談したいことがあって
- 相手:相談?別にいいけど
- あなた:ありがとう!んじゃ○日○時に○○駅で!
- 相手:うん、わかった
- あなた:【当日】今日はありがとう。立ち話もなんだからカフェに入ろう
- 相手:そうだね
- あなた:あ、そういや夜ご飯まだ食べてなかったんだ、○○さんもおなか減ってるよね。ついでだからごはん屋でもいい?
- 相手:う、うん
1時間だけ、とか5分間だけ、とか時間指定するというのがフットインザドアを恋愛で使う際に効果的です。
通話か実際に会ってる時、が大事!
今回の具体例は、相手がゆっくり考えるヒマなく、話題を展開することで「ただ相談を受けるだけ」から「カフェにまで行く」⇒「ごはん」まで話を持って行っています。
なのでLINEのメッセージやメールなどのように考える時間を相手に与えてしまうケースでは今回のフットインザドアは使えません。
一つ目の具体例で見たモーニングコールとは違って、かなり強引系のフットインザドアの使い方となります。
強引系のフットインザドアはあまりおすすめしない…
具体例まで出して紹介しておいてなんなんですが、こういう強引な?よくあるしつこいセールスマンみたいなグイグイいく系のフットインザドアは個人的にはあまりおすすめできません。
これって確かにデートはできますし、強引なセールスマンであれば半ば無理やりに契約までこぎつけられると思います。
でもこれをされた側ってなんとなく「あー…」っていう後悔があるんですよね。
「仕方なくそうしちゃった」っていう。納得しきれない感というか。
営業マンの押し売りや、恋愛で言うならワンナイトのような一度限りの関係でいいのであれば、強引系のフットインザドアも使えはしますが、恋人になりたい!のように本気の恋愛であればこそ、強引系フットインザドアは使用しない方がおすすめです。
- コラム
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フットインザドアについて思う事
フットインザドアについて個人的に思う事は、フットインザドアが上手くいく時って大きく分けて2つあるんじゃないかな、というコト。
- 認知的不協和を起こして相手に好意があると勘違いした上で成功するパターン
- いまさら断るのも申し訳ないし、しんどいし「まあいいよ…」のパターン
上で見たモーニングコールの例が①、でデートの例が②です。
確かにどちらも頼みごとを聞いてもらいやすくはなってるんですが、オッケーするに至った相手の感情は双方でちょっと違うのかな、と。
一度オッケーすると後から条件が多少悪くなったり、追加条件を出されても「はいはい、わかった、もういいから…(はやく終わってくれないかなー)」ってなりますよね。これってビジネスなどではいいと思うんですが、恋愛だとあまりいい感情とはいえません。
なのでフットインザドアを使う際はできるだけ強引ではない使い方がおすすめです。
講座:フットインザドアについて
ここから下はフットインザドアについてその由来や行われた実験など、そういった心理テクニックの裏付け部分を紹介してますので、読みたい方だけ読んでみてくださいね。
フットインザドアの由来
フットインザドアは押し売りのセールスマンが、玄関でドアを閉められないために足をドアの間にはさんで交渉を行った、というのが由来。
「5分!5分だけでいいのでお話だけでも!」という、よくある営業マンのセリフがその由来なんですね。
フットインザドアの実験
フットインザドアの実験に関しては、前回イエスセットの講座で紹介した、ジョナサン・フリードマンさんとスコット・フレイザーさんという二人の社会心理学者の行った実験が同じく有名。
- 「安全運転と書かれた看板を庭に立てさせて」といきなりお願いするケース
- 「安全運転と書かれたステッカーを車の窓ガラスに貼らせて」とお願いして、その2週間後に「庭に看板も立てさせて」とお願いするケース
- 「カリフォルニアの美観保全に関する嘆願書に署名して」とお願いして、その2週間後に「庭に看板を立てさせて」とお願いするケース
この3つのケースで、どれが一番庭に看板を立てさせてくれる率が高かったのかを調査した実験なんですが、①が17%、②が76%、③が46%という結果だったんです。
結局相手に最初小さめの要求、この実験だと「車にステッカーを張る」とか「署名して」という簡単なお願いを聞いてもらい、その後に、本題の大きめの要求である「庭に看板立てさせて」を伝える方が受け入れてくれやすいんですね。
ただ、上でも書いたようにフットインザドアは強引に進めると、優しい人だと「断り切れない…」という、相手の優しさに付け込んだやり口のようにもなってしまいます。
できるだけ無理強いせずにソフトに使っていくのが恋愛では望ましいのかな、と個人的には思います。
フットインザドアは洗脳にも使われている
またフットインザドアは恋愛やビジネスだけでなく恐ろしい洗脳時にも使われています。
書籍なので有名な例でいうと、捕虜に対して「共産主義は素晴らしい」と書かせたり唱えさせたりし続けると、そのうち本当に共産主義の考え方を受け入れるようになる、というもの。
アメリカ人の捕虜(アメリカは言うまでもなく資本主義です)を中国(中国は共産主義)が洗脳しようととして行われたもので、イメージだと共産主義を素晴らしいと言えば拷問は免除してやる、とか、共産主義は素晴らしいと書けば飯を用意してやる、のように報酬を用意すると思うんですが、この洗脳では上で見た一貫性の原理のキモである無報酬にするため、そういった拷問や褒美のようなものは与えられなかったんです。
そうすると次第に捕虜は
- 強制(褒美につられた)されたわけじゃなく、自分で決めて共産主義は素晴らしいって書いたり言ったりしてる
- でもオレはアメリカ人だから当然反共産主義なんだ…、あれ、なんか変だ、これ(共産主義は素晴らしいと書いている「事実」と「自分の思想」とが食い違っていて気持ち悪い「認知的不協和」状態)
- 気持ちと行動の不一致を直したくて仕方なくなる
- 結果、共産主義は素晴らしい、という思想を受け入れる
という心の変化を取る人も出てくるんです。
中には自分の思想の方に合わせるために「共産主義は素晴らしい」と言ったり書いたりするのをやめることで認知的不協和を解消しようとした人もいると思いますが、長い捕虜生活で精神も疲弊していて正常な判断がしづらかったのかなと思います。
こんなふうにフットインザドアは恋愛でも使えますが、本当はとても怖い心理テクニックなんです。